生前整理とは?メリット・やり方をプロが解説!生前整理パーフェクトガイド
「終活」という言葉が広く認知されるようになり、終活の1つである「生前整理」にも昨今注目が集まっています。
遺品整理ではなく生前整理は、そのとおり本人が生きている間に行なうものですが具体的に何をするのかまではよく知らない方も多いのではないでしょうか。
生前整理は自分の身の回りを改めて見直すことで、残された人生を豊かに生きるためのヒントにもなるものです。
今回はこの「生前整理」を徹底的に解説していきます。
生前整理とは?
生前整理とは、自身が生きているうちに自身の死後のことを考えて財産や身辺の整理をしておく事です。
なぜ生前整理をするのでしょうか?
生前整理の大きな目的は、自身の死後、遺族にかける負担を軽減するためです。
事前の準備なしで遺品整理を行う場合と生前整理後の遺品整理とでは、遺族にかかる負担が身体的にも精神的にも大きく異なります。
準備なしの遺品整理においては、遺品の確認だけでもかなりの時間がかかるケースもあり、かつモノが多ければ片付け・処分にかかる費用が高額になってしまいます。こういった問題が遺品整理をするご遺族様を悩ませることも少なくありません。
生前整理は必ずしも必要なことではありませんが、遺族の負担を減らすため、近年は生前整理を行う方が増えてきている傾向にあります。
遺品整理・片付けとは違うの?
遺品整理とは、前述のように自身の死後に財産は使用していたものを遺族が片付けることです。つまり自身のモノを別の人が整理・片付けをすることで、全くの別物です。
「遺品整理」と「生前整理」は誰が整理をするかという点が大きく違います。
生前整理のメリット
生前整理をすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
自分の遺品の扱いを指定できる
生前整理をしておくと、死後ご自身のモノを誰に譲るのか、処分するのかなどを指定することができます。自身が大事にしているものや思い入れのあるものなど、生きている間に明確に扱いを決められるのは大きなメリットです。
エンディングノートなどにまとめておくことで、遺族が遺品の整理や処分を進めてくれるでしょう。
ただし遺産については、希望通りに分配するには遺言書が必要です。生前整理の際に遺言書を作成しておくことも、後のトラブルを回避するための方法の一つです。
自分の持っている財産の整理ができる
亡くなった方の遺品整理前には必ずと言っていいほどその方の財産について何がどれだけあるのかを確認する工程が発生します。目録があるだけで、遺品整理の際に遺族の負担がかなり軽減されるのは間違いありません。
また多くの資産運用などをされている方は、一度自身の財産を整理することで、今後どのように財産を扱っていくかを考え直すきっかけにもなるでしょう。
タンス貯金がみつかった、塩漬けにしていた株式があったなど、意識からはずれていた財産が見つかるかもしれません。
生前整理の際には自身の財産を目録にまとめておくことをおすすめします。
遺族の遺品整理の負担を減らせる
遺品整理の際、まず遺族が苦労するのが先程の財産含めて遺品の確認です。部屋や家にあるもので全てであれば、棚の引出しや屋根裏、倉庫などをすべて見ることで把握することは可能でしょう。しかしこれでもかなりの労力と時間がかかります。
また遺品は家の中だけとは限りません。
貸金庫や別で借りているトランクルーム、インターネットが普及した昨今であればインターネット上など、情報がゼロから探すのはかなり困難です。
事前に生前整理をしており、どこに何があるかをまとめたものがあれば遺族のこれらの負担は大きく軽減することができます。
相続トラブルを防げる
先程から何回か出てきている「遺言書」も、実は生前整理の一つです。
遺産がある場合は、遺言書を残すことで遺族間の相続トラブルを防ぐことにつながります。
遺言書がなくても、民法の規定に従って遺産分割することは可能ですが、特定の財産を特定の人に残したい場合、法定相続人以外の人に財産を引き継いでほしい場合、など自身の意思表示を遺言書という形で正式に残しておくことで遺族間での揉め事を防ぐことにつながります。
すっきりとシンプルな暮らしが送れる
生前整理は遺族の助けになることのほか、ご自身の為にもなります。生前整理で不要な物を処分していくことで、ミニマリストのようなモノを持たず、本当に必要なモノだけで生活していくというライフスタイルをその後送っていく機会を得ることができます。
生前整理をすべきモノとは?
生前整理では具体的にどのようなことをすべきでしょうか?
やることは多いですが、ジャンルに分けて紹介していきます。
品物の整理
思い出の品
写真・日記・手紙・自作の絵画等の制作品などをどうしてほしいか希望を記述しておきましょう。譲り受けてほしい人がいる場合、処分してほしいなど遺族が仕分けしやすいようにしておくと良いでしょう。
書籍やコレクション
売却や譲渡など自身の死後、これらをどうしてほしいか希望を記述、もしくは家族に伝えておきましょう。
書類
特に契約関係の書類については、まとめて所在を明確にしておきましょう。スペースを取るようであれば、デジタルデータにするのも良いでしょう。
日用品など
遺族が使用できるものがあれば使用してもらい、不要であれば処分してもらいましょう。日用品であれば処分されてしまう可能性が高いため、残したいものだけでも記載することをおすすめします。
実家の不用品の整理
実家を出て生活している場合、実家に置いてある自身の荷物の整理も忘れずに行いましょう。
家具や家電の整理
同居家族がいない場合は特に、死後の処分方法をしっかりと話し合っておきましょう。まだ使えそうであれば中古家具屋やリサイクルショップなどに引き取ってもらうのも良いでしょう。
使えないのであれば、粗大ゴミや行政の回収サービスに出す、不用品回収業者や片付け業者に依頼する等で手数料はかかりますが、引き取ってもらえるでしょう。
デジタル関連
パソコンやスマートフォンなどの写真やデータなども整理が必要です。ログインが必要なデジタル機器やWEBサイトのIDやパスワード、利用しているサービスなどを残しておきましょう。
料金が発生しているサービスがある場合、死後も継続して課金されてしまうこともあり、トラブルの元になります。しっかり整理しておきましょう。
例として下記のようなものがあります。
- 電話番号やメールアドレス
- 写真や動画など
- SNSやブログなどのWEBサービスアカウント
- アプリや月額課金サービス
- クレジットカードや電子マネー情報
- お金(ネット銀行、ネット証券、暗号資産、FXなど)
最近の指紋や顔などの生体認証を用いたログインによるサービスは、きちんと文字列でのパスワードも残すようにしてください。
財産
金融資産(現金・預貯金・株式など)
相続時の遺族間のトラブルを避けるためにとても大切です。
できれば家族間で事前に話し合いをし、しっかりと意思を伝えるようにしてください。
不動産(土地・建物)
遺産相続で最もトラブルが多いのは土地や家などの不動産です。残された家族で争いが起こらないようしっかりと整理と話し合いをし、みなが納得した形で相続できるようにしましょう。
貴金属や美術品など
こちらも高額になりがちなので、争いやトラブルが発生しがちです。死後の処分方法など、家族でしっかりと話し合っておきましょう。貴金属や美術品は保管方法は悪いと価値が下がってしまうものありますので、取り扱いなどについてもきちんと残しておくと良いのではないでしょうか。
このように、自身が亡くなった場合に、財産は遺族へ相続されますが、その際にどういった財産がどのくらいあるのかを把握するのは大変なため、財産目録を作っておくと遺族の労力が軽減できますのでおすすめです。
その他
そのほかに、整理すべき事柄について紹介します。
友人や知人の連絡先や連絡に関する確認
自身の死後に連絡してほしい友人や知人の連絡先を家族に伝えておきましょう。
葬儀に関する用意
葬儀については、決める内容が多いため事前に家族に希望を伝えておくと遺族の負担を大きく軽減できます。以下、葬儀について主な確認事項です。
- 葬儀の形式
- 葬儀の宗教
- 葬儀の内容・してほしいことを決める
- 葬儀に誰を呼びたいかの確認
- 遺影の写真を撮る
- 葬儀費用の準備
- お墓の準備
先祖代々のお墓に入りたいなど、お墓の希望について家族に伝えておきましょう。
最近では埋葬方法も「樹木葬」や「散骨」など、様々な形がありますので希望を伝えると良いでしょう。
また地震で生前墓を購入すれば遺族の負担を減らすこともできます。
遺言書の作成
遺言書とは、財産を自身の死後どのように処分するかを指定する書面の事です。
遺言書について、後程詳しく解説していきます。
生前整理のやり方
前章で何を整理すべきか解説しました。ここでは、生前整理はどのように進めていけばよいのか、手順を紹介します。
生前整理の手順
大きく分けて以下の5つの手順です。
【手順①】品物の整理
大きく、「処分する」「残す」「売る」に分別します。
遺品整理の際に遺族が苦労するのが遺品の分別です。そのためこの品物の整理をしておくと遺族の負担を大きく減らすことができます。
「残す」ものについては、主に遺産等の価値があるものですが、それ以外に思い入れがあり誰かに持っていてほしいなどの希望があれば、その旨を記述しておきましょう。
「売る」については、家具・家電で高級なモノやまた購入してから日が浅いものなどは伝えておきましょう。またコレクションや芸術品など専門家以外は価値がわかりにくいものについてもその価値が家族に伝わるようにするのがポイントです。
【手順②】デジタル関連の整理
前述したように、パソコンやスマートフォン等のデジタル機器のログインパスワード、使っているサービスのリストとそれらのログイン情報などを1つにまとめておきましょう。
【手順③】財産の整理
財産については、自身の死後最も遺族がトラブルとなりやすいため、なるべく生前に整理しておくことをおすすめします。
財産整理の際には、主に「資料」「情報」「実物整理」の3つの観点で整理して記述しておきましょう。預金通帳や証券、権利証などの財産に関する「財産資料」は整理し、1つにまとめておきましょう。
上記の財産を含めた、ご自身がもつ財産に関する「財産情報」をまとめましょう。いわゆる財産目録になります。
また借り入れなどもマイナスの財産としてまとめておきましょう。
財産の情報がまとまったなら、最後にそれらをどうするのか整理していきます。無価値なものは解約する、生前に譲渡できるものは譲渡するなどです。
【手順④】遺言書を残す
遺族に正しく対処してもらいたい事項については遺言書に記載しましょう。遺言書には法的拘束力がありますが、正しい手順を踏まないと効力を発揮しない場合があります。作成時には専門家に相談してみるのも良いでしょう。
【手順⑤】エンディングノートを残す
エンディングノートは遺産に関わらず、葬儀の希望や遺族への思いなど自身の希望を自由に記載できるものです。
法的拘束力はありませんが、自身の希望を家族に伝えるために残しておくと良いでしょう。
決してこの手順通りに進めなくてもいいのですが、まずは取り組みやすい品物の整理から始めてみても良いでしょう。
遺言書などの文書について
生前整理の際に作成しておくことが望ましい文書について、ここで解説していきます。
遺言書とは
遺言書では、自身が残した財産を「誰が、どの財産を、どのくらい」相続するのかを指定する書面で法的に拘束力があります。
遺言書の内容を決める際には、主に下記の項目を考えていきます。
相続人と相続割合の把握
相続は法律上、誰がどのくらいの割合で相続するかが決められていますので、まずは法律上誰がどのくらいの割合で相続する権利があるか把握しましょう。
財産目録の作成
相続の対象となる財産をリストアップします。これには借金などのマイナス財産を含みます。
相続人毎の貢献度や依存度を確認し、処分方法を決める
貢献度や依存度に応じて、分配度合いを決めていくことが多いようです。
このような手順で、遺言の内容の草案を作成していきます。
遺言の種類を決める
遺言には3種類あるため、どの遺言書にするか決めます。
ここでは簡潔に違いを解説しますが、詳細は専門家や法律事務所に確認をしましょう。
自筆証書遺言
民法の規定に沿って、自身が自筆で作成する3つの中で最も手軽な方法です。
必ずご自身が直筆で下記、署名や押印をしなくてはなりません。
公正証書遺言
これは、遺言者が伝えた内容を公証人が書面に落とし込んで作成する遺言書です。
手続きに手間や費用がかかりますが、自筆証書遺言に比べて公証人が作成するため正確に作成できますので、手続きの不備のリスクを抑えることができます。
秘密証書遺言
内容を誰にも知られたくない場合に利用するのがこの秘密証書遺言です。
自身で作成した遺言書を公証役場で記録してもらうという方法ですが、不備のリスクに加え、手間もかかりあまりメジャーな方法ではありません。
財産目録
財産目録とは、遺族が相続する財産を一覧などにして明確にまとめたものです。
法律上必要なモノではありませんが、遺族間でのトラブル防止や労力の削減につながるため、作成してあると遺族は助かるものです。
遺言書と混同している方もいるかもしれませんが、財産目録はどの財産がどれだけあるかをまとめたものであるのに対して、遺言書は財産を誰に、どの財産を、どのくらい相続するかを指定するもので全く別物です。
エンディングノート
遺言書との大きな違いは、遺言書には法的効力があり、その内容は遺産や子供の認知など決められたことのみであるということです。
エンディングノートには法的効力はありません。
しかし記載できる内容は自由で死後の希望はもちろんの事、生きている間の希望を記載しておき家族に伝えることにも役立ちます。
身体が動かなくなった、正常な判断ができなくなった場合にどうしてほしいかなどの希望も記載しておくことで、家族に思いを伝えることができるでしょう。
これらの保管場所はよく考えましょう
どの書面も重要な情報が記載されているため、簡単に見つからない場所に保管するようにしましょう。しかし、いざというときに家族が見つけられないというので大変ですので、信頼できる家族と情報を共有しておくのも良いでしょう。
生前整理はいつから始めるべき?
年齢だと60代頃から始める人が多い
健康寿命が70歳から75歳くらいといわれており、そこから逆算して60代頃から始める人が多いようです。生前整理は体力も気力も使いますので、少しでも健康なうちに始めようということだと思います。
30代40代からの生前整理は早すぎる?
急な事故や病気に備えて30代から始める人も増えてきています。30代40代となると親から相続した財産などある方はまだ少ないかもしれませんが、区切りの良いタイミングなどで最低限の整理をして、万が一に備えるのも良いでしょう。
ミニマリストを目指す
ミニマリストとは近年注目を集めているライフスタイルの一つで、最小限まで持ち物を減らして暮らす人の事です。生前整理はいつ始めても良いものですので、若い方などは生前整理を機に、ミニマリストのような本当に必要なモノ・大切なモノを厳選することで、より心豊かな暮らしを実現できるという考え方でその後暮らしていくのも良いのではないでしょうか。
生前整理はプロの業者に依頼することもできます
生前整理という言葉の認知度が高まるとともに、生前整理の一部をプロの業者に依頼や相談する方も増えているようです。
生前整理を業者に依頼するメリット
法律やお金に関すること、労力や時間的なことなど自身での解決が難しいことでもプロに依頼することで解決が可能です。それぞれの分野にあったプロに依頼をしましょう。
遺言書の作成であれば司法書士や弁護士、財産目録の作成であれば不動産鑑定士、不用品の処分であれば不用品回収業者など、プロに依頼することで不備のリスクを避けることや、労力や時間を大きく削減することができます。
「片付けドクター」の生前整理・遺品整理
片付けドクターでは生前整理・遺品整理の中でも特に不用品の引き取りや買取を行っております。生前整理の中で不要になった家具・家電の片付け、ゴミ屋敷のような状態になった部屋の片付けなど、様々なケースに対応しております。
まずは現地で拝見させていただき、ご希望を伺った上でお見積りをさせていただければと存じます。
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よくある質問
生前整理は一人で行うべきでしょうか?
生前整理は遺族のためになるものですから、必ずしも一人で行う必要はありません。むしろ家族と相談しながら情報を共有していくことが大事です。自身の希望をまとめるときなどは、一人でじっくり考えることも必要ですが、片付けなどの場合は人手がある方が良い場合もあります。
生前整理の業者はどこまで相談に乗ってくれますか?
専門分野が業者によって異なるため、相談内容によってその道のプロにご相談されるのが良いと思います。片付け業者で遺言書などの相談に乗ってくれる業者もいるとは思いますが、遺言書は正しく書かないと法的効力を発揮しないこともあるため、そこは弁護士などの専門家に相談される方がリスクを回避できると思います。
まとめ
生前整理は60代から始める方が多いようですが、いつ始めても問題ありません。確かなことは体力があり、自分の意志で判断ができるうちに行なうことが良いということです。
生前整理は死後のことだけではなく、その後の自身の人生にとってもどう過ごしていくかを考える良い機会となるはずです。
生前整理は、わからないことや大変なことは無理をせずに専門家に相談して進めましょう。